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​コラム

製造業の業務プロセスを変革する最新技術をテーマにした連載コラム

第2回:
【2023年版】製造業におけるデジタルツインの最新事例3選

第2回デジタルツインコラムサムネ

デジタルツイン(Digital Twin)とは、現実世界から収集したデータを元に、現実世界と双子のようにそっくりな世界を仮想空間上に再現するテクノロジーです。デジタルツイン連載コラムの初回となる前回は、基礎編としてデジタルツインの概念やメリット等を解説しました。

 

第2回となる今回は、製造業におけるデジタルツインの活用事例をテーマに、経済産業省が発表している「DX銘柄2023」の選定企業が取り組む最新事例を3つご紹介します。

 

デジタルツインとは?その概念やメリット、注目される理由については前回のコラムをご覧ください

第1回デジタルツインコラムへのリンクバナー

 デジタルトランスフォーメーション
(DX:Digital Transformation)とデジタルツインの関係

デジタルトランスフォーメーション(以下DX)とは、経済産業省の定義によると「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変する(※1)」ことです。今やさまざまな企業がDXに取り組んでいます。

 

新たなデジタル技術が次々に誕生する中、インプットとして必要となるのが「データ」です。企業はデータを重要な資産として蓄積している一方、その一部しか活用できていないケースが少なくありません。というのも、データそのものはそれだけでは意味を持たず、加工して、意味のある「情報」として可視化する必要があるからです。

 

例えば毎日の最高気温を記録しているとして、2023年9月1日は35℃だったという1つのデータは、単なる事実に過ぎません。一方、9月1か月間のデータの平均値を算出し、昨年同時期と比較した結果が自動でレポートされたらどうでしょう。そこから、今年はより平均気温が高いといった気づきを得て、明日も暑いだろう予測を立て、もしあなたがコンビニオーナーなら、アイスを多めに発注しよう、という行動に移せます。さらに言えば、「明日も暑いだろう」のような将来の「予測」や「アイスを多めに発注する」という「行動」までも自動化するデジタル技術は多く存在しています。

 

<データ活用のプロセス>

データ活用のプロセスイメージ

デジタルツインもその一つですが、分析および予測した結果を現実に限りなく近い形でリアルタイムに再現できる点が特長です。つまり、次にすべきより有効な行動が検討しやすくなるとともに、実際に行動するまでのリードタイムをぐんと短縮できます。

さまざまなデータをインプットすることで構築されるデジタルツインは、DXを実現する有効な手段の一つです。これがデジタルツインとDXの関係であり、デジタルツインはDXを加速するための重要なテクノロジーと言えます。

日本の製造業におけるデジタルツイン最新事例3選

では実際に、企業はデジタルツインをどのように活用しDXを実現しているのでしょうか。経済産業省では、デジタル技術を活用してビジネス・モデルを抜本的に変革し、競争力を強化している企業を「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として、2020年から毎年選定しています。(※2)ここからは、2023年に発表された「DX銘柄2023」が取り組む最新のデジタルツイン活用事例を3つご紹介します。

DX銘柄ロゴ

1.株式会社小松製作所(機械)

小松製作所では「DXスマートコンストラクション」を掲げ、建築現場の情報を活用し、測量から検査までの建築プロセス全体の安全性および生産性を高めるソリューションを提供しています。その基盤には、建築現場のあらゆるモノやデータを繋いで作成するデジタルツインが欠かせません。

 

同社は従来から、GPSやセンサによって機械の稼働管理を行う「Komtrax」を搭載したICT建機を提供しています。さらに2021年に株式会社EARTHBRAINを発足し、株式会社NTTコミュニケーションズを始めとするIT企業と共同で、建築現場のあらゆるデータを可視化するデバイスやアプリケーションの開発をスタートしました。小松製作所のICT建機とEARTHBRAINのアプリケーションを組み合わせることで、建築現場のデジタルツインを作成し、施工プロセス全体の最適化に役立てています。

2.AGC株式会社(ガラス・土石製品)

AGCでは化学品プラントにおける「プロセスデジタルツイン」を開発し、子会社であるアサヒマス・ケミカル社(インドネシア)の製造プラントで運用を開始しています。

 

プロセスデジタルツインとは、製造現場の運転データをリアルタイムに収集して即時に高速計算することで、仮想空間上にプラントを再現するテクノロジーです。機械の運転状態や性能を可視化し、デジタルツイン上で現場の状況を把握できるため、プラントの安定操業に役立つと期待されています。同社が開発したプロセスデジタルツインでは、反応から蒸留精製までの幅広い製造工程、および精密な化学反応に対応することによって、再現度の高いデジタルツインを構築できます。

3.株式会社ブリヂストン(ゴム製品)

ブリヂストンが2022年9月から提供する「リアルタイムモニタリング」は、輸送事業者が所有するタイヤをリアルタイムにモニタリングする(タイヤのデジタルツインを活用した)新サービスです。

 

具体的には、同社が開発した「Tirematics(タイヤマティクス)」というデジタルツールを活用します。Tirematicsは、タイヤの空気圧と温度の情報をリアルタイムに同社のタイヤ情報管理ツール上に送信し、遠隔モニタリングを行います。走行中のタイヤに異常が検知されると、ドライバーや車両管理者などに自動でアラート通知される仕組みで、タイヤ起因の運行トラブルを未然に防ぐことができます。

上記3つの事例については『「DX銘柄2023」選定企業レポート』(※3)から抜粋しています。

まとめ

このように、デジタルツインはDXを加速する手段として大きな注目を集めています。日本国内においても既にビジネスの現場で実用化され始めており、企業はBtoB、BtoCを問わず、目的に応じた様々なデジタルツインを構築することで新たなサービスを創出しているのです。

次回は、もう少し技術的な側面に着目し、デジタルツインを支えるテクノロジーについて詳しくご紹介する予定です。お楽しみに!

出展:

※1:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)
  (経済産業省)

※2:デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)(経済産業省)

※3:「DX銘柄2023」選定企業レポート(経済産業省)

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