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​コラム

製造業の業務プロセスを変革する最新技術をテーマにした連載コラム

第5回:
生産シミュレーションでデジタルツインを支える
3DEXPERIENCE DELMIA

第5回デジタルツインコラムサムネ

デジタルツイン(Digital Twin)とは、現実世界から収集したデータを元に、現実世界と双子のようにそっくりな世界を仮想空間上に再現するテクノロジーです。これまでのデジタルツイン連載コラムでは、デジタルツインの概念やメリット、デジタルツイン最新事例に加え、必要となる要素技術を解説してきました。

 

過去のコラムはこちら>

第1回:デジタルツインとは?メリットと製造業における重要性を分かりやすく解説

第2回:【2023年版】製造業におけるデジタルツインの最新事例3選

第3回:デジタルツインを支えるテクノロジーとは?種類と概要を徹底解説

第4回:画像処理技術とAIでデジタルツインを支えるNVIDIA GPU

第5回となる今回のテーマは、デジタルツインの実現に必要なテクノロジーの1つに挙げられる「シミュレーション」です。一口にシミュレーションと言っても、何をシミュレーションするのかによってCAD、CAEをはじめさまざまな種類があります。今回はその中でも、製造業の生産ラインに特化した「生産シミュレーション(製造シミュレーションとも)」に焦点を当て、同シミュレーションによって具体的に何が出来るのか、デジタルツインにおける役割を解説し、最後に、代表的な生産シミュレーションのプラットフォームとして世界中で利用されている「3DEXPERIENCE DELMIA」をご紹介します。

<目次>

・生産シミュレーションとは

・生産シミュレーションのメリットとデジタルツインとの関係

・3DEXPERIENCE DELMIAの機能

​  ◦Ergonomics

​  ◦Process Engineering

  ◦Robotics

  ◦Virtual Factory

  ◦Robotics Virtual Commissioning(RVC)

​・まとめ

生産シミュレーションとは

デジタルツインのイメージ図

生産シミュレーションとは、製造業における工場などの生産ラインをデジタル上にモデル化し、稼働状況を再現・予測すること、またはそのためのソフトウェアを指します。具体的には、ロボットなどの設備、作業者、製品の投入計画といった情報をインプットすることで、そのラインを稼働させたときの成立性や作業性、サイクルタイムなどをシミュレーションによって可視化し、計画の妥当性を確認することができます。

 

これから新しく生産ラインを立ち上げる際など、実際の設備がまだ何もない状態でも、生産シミュレーションがあればデジタルで事前に検討することができます。反対に、既に稼働している生産ラインをシミュレーションすることで、ボトルネックを特定して改善するといった使い方も可能です。

 

生産ラインは会社ごとにさまざまで、対象製品が変わる度に再設計が必要になるため、それら全てをシミュレーション無しにトラブルなく構築するのは困難で、また非常にリスクが高いと言えます。このような点から、生産シミュレーションは製造業にとって重要なツールとなっています。

生産シミュレーションのメリットとデジタルツインとの関係

生産シミュレーションの3つのメリット

生産シミュレーションのメリットは大きく3つあります。

​1.リードタイムの短縮とコスト削減

生産シミュレーションでトライ&エラーを繰り返すことによって、実際の設備を構築した後の致命的なミスを減らし、手戻りを少なくすることができます。また、そのトライ&エラーをもし実機でやろうとすると、限られた時間の中で実施する難しさに加え、万が一不具合が発生した際には、再び設計から手戻りが発生し、納期やコストの圧迫に繋がります。設計段階でシミュレーションを活用することで早期に課題を解決し、​立ち上げ全体のリードタイムを短縮できます。

2.生産効率の最大化

生産シミュレーションでは、その条件で生産ラインを稼働させたとき、どこに待ちが発生するのかや、人の導線・作業のしやすさなどを分かりやすく可視化し、ボトルネックを洗い出すことができます。ロボットも人も最高のパフォーマンスを出せるような最適な生産ラインを構築することで、生産効率を高めることができます。同時に、作業者に負担の少ない製造工程は従業員の定着にも繋がり、ひいては生産効率を高めることにもなります。

3.DXの加速

DXの一環としてスリムなモノづくりを実現するためにも、生産シミュレーションが役立ちます。リアルな世界でのやり直しを少なくするのと同時に、デジタル上では何度でも失敗でき、何度でも試せるのです。こうして出来上がった成果物(シミュレーション結果)は、以下のように活用できます。

・レイアウトや設備動作に関する認識のズレを回避します

 →図面ではなく3Dで分かりやすく可視化することで、共通理解が容易になります

・シミュレーションで作成した動作を実機と連携させることで、早期立ち上げに寄与します

 →シミュレーションのロボットの動作を、実物のロボットに直接取り込み再現できます

・日々発生する課題に対して、関係者(自社、顧客、協力会社等)とのコミュニケーションを促進し、合意形成のもとプロジェクトの進行を可視化します

 

前回のコラムで述べた通り、デジタルツインにはシミュレーションが欠かせません。特に工場のデジタルツインを構築する場合は、非常に専門性の高い、産業用ロボットや治具、設備などを、形状だけではなくその動きまで正確に再現しなくてはなりません。こうした機能を持つ生産シミュレーションは、デジタルツインという文脈でも大きな役割を持っています。

​<参考>
もっと詳しく!生産シミュレーションの代表的な機能をご紹介

こちらの記事では、生産シミュレーションの主な機能および実際に生産シミュレーションを行うための手順について、代表的なシミュレーションプラットフォームである「3DEXPERIENCE DELMIA」を例に分かりやすくご紹介しています。シミュレーション手順について抜粋すると以下のようになります。

 

Step1:作業者やロボット、コンベヤーなどの初期配置(レイアウト)を設定

Step2:生産ライン上を製品がどう流れるのか(プロダクトフロー)を設定

Step3:コンベヤーの速度やロボットの加工時間(アクティビティ)を設定

Step4:作業者やロボットの動きを設定

 

これら4つのステップによって、生産シミュレーションを実行することができます。

3DEXPERIENCE DELMIAのシミュレーション手順

3DEXPERIENCE DELMIAの機能

これまで、生産シミュレーションの概要とデジタルツインにおけるメリットをお伝えしてきました。この章ではより具体的に、同領域のプラットフォームとして、世界中の製造業で使われている「3DEXPERIENCE DELMIA」についてご紹介します。

 

開発元であるDassault Systems社は、1981年に設立されたフランスのソフトウェア会社で、現在では日本を含め世界中で事業を展開しています。「人体のバーチャル・ツイン・エクスペリエンス」として「3DEXPERIENCEプラットフォーム」と呼ばれる基盤を構築し、そのプラットフォーム上でさまざまなツールを展開。そこから必要なものを顧客が選択して使える仕組みを提供しています。同社の顧客は、航空や自動車、医療業を始めとした、幅広い業界に及んでいます。

 

その3DEXPERIENCEプラットフォーム上で提供されるツールの1つが「3DEXPERIENCE DELMIA」(以下DELMIA)です。DELMIAは生産シミュレーションとして、実際の工場や製造ラインが完成する前から製造工程を可視化し、工場レイアウト、搬送計画、工程計画、ロジスティクス計画、人員計画を仮想環境で検証するための機能を持っています。DELMIAはシミュレーションの対象に応じて、Ergonomics・Process Engineering・Robotics・Virtual Factory・Robotics Virtual Commissioning(RVC)という5つのジャンルに分かれています。

Ergonomics

Ergonomicsは、エルゴノミクス(人間工学)に基づいて、作業者にとって安全で快適な作業環境を検証するためのツールです。デジタルマネキンの性別や身長、持ち運びなどの動きを設定することで、体にどれほどの負荷や疲労が生じるのかを解析します。

労働災害リスクを軽減するとともに、快適な作業環境を構築することで、作業員の生産性向上にも繋がります。

Ergonomicsのイメージ

Process Engineering

Process Engineeringのイメージ

Process Engineeringは、あらゆる製品の組立工程を検証するためのツールです。

具体的には、衝突を避ける組立パスを自動生成したり、各工程に必要なロボットや工具を管理したり、アセンブリの順番や実現可能性を検討するといったことが可能です。

Robotics

Roboticsでは、ロボット・タスクのシミュレーションが可能です。

アーク溶接、スポット溶接ロボットのワークや、スプレー、研削、仕上げなどの表面加工プロセスなどを幅広くシミュレーションできます。

Roboticsのイメージ

Virtual Factory

Virtual Factoryのイメージ

​Virtual Factoryは工場全体のモノの流れを事前検討するツールです。
DELMIAのライブラリに登録されている3Dモデルをそのまま使ったり、実際の工場を3Dスキャンによって取り込んだりすることで、生産ラインをデジタルで再現。製品やロボット、作業者の流れを設定することで、待ちの発生などのボトルネックを可視化します。

Robotics Virtual Commissioning(RVC)

Robotics Virtual Commissioning(RVC)とは、仮想ロボット・コントローラー・ソフトウェアによって、ロボット実機プログラムを検証するツールです。
プログラムが正しく動作するかを
シミュレーションによって事前に確認できます。

5.DigitalTwin_image08.png

まとめ

このように、製造業において工場のデジタルツインを構築するためには、生産シミュレーションは欠かせないテクノロジーです。Dassault Systems社が提供するDELMIAは、生産ライン・ロボット・作業者といった工場に関わるあらゆるリソースをデジタルによって可視化およびシミュレーションすることで、生産準備にかかる時間とコストを最小限に抑え、また最適な生産プロセスの設計にも寄与します。

ここではDELMIAが持つ5つの機能を簡単にまとめましたが、下記の製品サイトにより詳しい情報を掲載していますので、是非ご覧ください。
 

 

 


 

過去のコラムはこちら>

第1回:デジタルツインとは?メリットと製造業における重要性を分かりやすく解説

第2回:【2023年版】製造業におけるデジタルツインの最新事例3選

第3回:デジタルツインを支えるテクノロジーとは?種類と概要を徹底解説

第4回:画像処理技術とAIでデジタルツインを支えるNVIDIA GPU

関連製品

3DEXPERIENCEロゴ.png

DELMIA 3DEXPERIENCE

DELMIAは、製造工程のシミュレーションを通じ、実際の工場や製造ラインが完成する前に仮想空間でTry&Errorを行い、最適な製造工程立案に寄与します。

NVIDIA Omniverse

Omniverse製品ページへのリンク

OmniverseはNVIDIA社が提供する3D仮想空間(メタバース)を構築するための
プラットフォームソフトウェアです

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